A. D. Millingtonさんによる中国古典麻雀(1910年代)

情報源(古典ルール):A. D. Millington著
    "The Complete Book of Mah-Jongg" (ISBN 0 297 81340 4)
日本語と不要な講釈:伊藤 和夫
(少し)修正、付注:関兆豪

資料的な価値があるだけでなく,実際やってみると, とても繊細で面白いルールです。符点の重みをズシリと感じることができます。

ルールの要点

	  文牌(同じ柄が2枚ずつある)
	  天    地    人    鵝    梅 (あとは漢字の名前がわからん...)
	+----++----++----++----++----++----++----++----++----++----++----+
	|●○|| ● ||●●||  ○||○○||    ||○○||○○||○○||○○||○○|
	|●○||    ||    || ○ || ○ || ○ ||    ||○○||○○||○○|| ○ |
	|●○||    ||●●||○  ||○○|| ○ ||    ||○○||○○||○○||○○|
	|    ||    ||    ||    ||    ||○○||    ||    ||    ||    ||    |
	|○●||    ||●●||    ||○○|| ○ ||    ||○○||●●||    ||    |
	|○●||    ||    ||    || ○ || ○ ||    || ○ ||    ||    ||    |
	|○●|| ● ||●●|| ● ||○○||    ||○○||○○||●●|| ● || ● |
	+----++----++----++----++----++----++----++----++----++----++----+
	  武牌(各1枚しかない)
	  九          八          七          六    五          三
	+----++----++----++----++----++----++----++----++----++----+
	|○○||○○||○○||○○||○○||●●||●●||●●||  ○||○○|
	|○○|| ○ ||○○|| ○ || ○ ||    ||    ||    || ○ ||    |
	|○○||○○||○○||○○||○○||●●||●●||●●||○  ||    |
	|    ||    ||    ||    ||    ||    ||    ||    ||    ||    |
	|  ○||●●||    ||  ○||    ||  ○||    ||    ||    ||    |
	| ○ ||    ||    || ○ ||    || ○ ||    ||    ||    ||    |
	|○  ||●●||○○||○  ||○○||○  ||○○|| ● ||○○|| ● |
	+----++----++----++----++----++----++----++----++----++----+

脱線しすぎました。麻雀に話を戻します。

例えば,
16点
36点(あがり…栄和でも自模和でも)
西8点
20点
だとすると,東西北は,それぞれ,72点,36点,36点を南に払うほかに,
西→東(16 - 8) x 2 = 16点
東→北(20 - 16) x 2 = 8点
西→北20 - 8 = 12点
の点棒授受が行なわれます。 これだと槓が多くなりそうだし,平和狙いには,ちょっとリスクがありますね。 そのせいか,門前役と暗刻役で大明槓(暗刻+捨て牌のカン)を暗刻と認めています。

現行の中国の各種ルールでは,日本の各種ルールと同様に, 和了者しか点数を計算しません。欧米に紹介されたのは, ある種のローカルルール(上流階級のもの?)だったとは考えられますが, 大体は,Millington氏の指摘するように,民間ルールは単純化の産物で, 中国と日本の単純化が,偶然同じ方向へ向ったでしょう。 全員で点を計算して,なおかつ引き算が必要とは,確かに面倒です。

点数表

1. 刻子槓子の点。おなじみのものです。全員がスコアできます。

明刻 暗刻 明槓 暗槓
中張牌 2 4 8 16
幺九牌 4 8 16 32

2. 雀頭の点。全員がスコアできます。あがってない人は, 対子1つだけに符点を付けられます。

三元牌 2
自風・場風 2
連風牌 4

3. 花牌。全員がスコアできます。

花牌を使うなら,1枚につき4符です。

4. あがった人専用のボーナス点

地方によっては,下記の和了者の翻数の一部が符点になっていることがあります (Millingtonさんの本では,「上海」と名指しされてます)。

平和 10(副露可,待ち不問)
対々和 10
嶺上開花 10
海底撈月 10
河底撈魚 10
開局リーチ 100

5. 全員がスコアできる翻数…翻牌と花牌

6. 和了者だけがスコアできる翻数…手の形と和了方式

アメリカでは,和了者以外も清一色で3翻得られると誤って伝えられました。 そこで,誰もが染めに走り,染め以外は和れないというルールが 登場する事態となりました(Cleared-Hand Game)。 もうひとつ,アメリカで1920年代に産まれたルールに, 1翻しばりがあります(One Double Game)。 これは,点の高い役を作ることばかり重視した結果のようです。 日本で戦後1翻しばりが導入されたのは,米兵の影響かもしれませんね。

先に翻しばりがないことが古典ルールの要点だと述べましたが, 翻しばり→ゲームの自由度減少,役の相対価値減少→新しい役の導入・ インフレ化→役の一層の価値減少→一層のインフレ化は必然の帰結です。 裏ドラは確かにひどいルールですが,裏ドラを責める前に, 翻しばりを見直さないと,結局同じ過程を辿ることになるでしょう。

実際,1920年代のアメリカでは,麻雀の普及期だったこともあり, これでもかというほど役やルールが発明され,大混乱を引き起したようです。 進取の気性に富む国民性が,裏目に出てしまったのでしょうか。 Millington氏はイギリス人なので,これらのルールを説明するついでに, アメリカ人をボロクソにけなしています。 他人なのに,読んでて,アメリカ人が気の毒になるくらいです。 参考にした書籍が,アメリカでは売られていない理由が, よく分かりました。

[注]でも、今のアメリカ公式AMJL麻雀を見ると、4面子1雀頭 のあがりの基本形まで廃止し、数々の特殊な形の手でしかあがれなくなり、 それはまるでもう「麻雀」とはいえないのではないでしょうか。それを 思うと、けなしたくなるのも仕方ないかも。

7. 満貫役。当然,和了者限定です。自動的に満貫となります。

地方によっては,認められない役もあると書かれています。 参考までに,Millingtonさんの本に出ている中国語の表音表記から 推測した当時の中国名を付記しました。「四福臨門」って素敵ですね。

事前協議が必要な満貫役(=ローカルルール)には,次のようなものがあります。

(おわり)